25年間の会社員経験で、「目的」と「手段」が履き違うことはよくあったのですが、常習的に「目的」と「手段」が入れ替わる職場がありました。
私自身が今でも納得できない嫌気の差した『誰トクの仕事なのか?』を考えさせられる2つのエピソードから、「目的」と「手段」を履き違える本質を見抜いて行きましょう。

目次
仕事における目的と手段とは?
どのような仕事でも目的が存在し、その目的と果たすために手段が存在します。
高校野球に例える
先ずは、分かりやすく高校野球を例にとってみましょう。
【目的】勝利を目指して甲子園に出場する
【手段】他校に負けない練習をする
「勝利を目指す」という目的のもとで、「甲子園に行く」という明確な目標も存在ます。
そのためには、ライバルとなる強豪校よりも効果的な練習して力を付ける手段を取ります。
目的と手段を履き違える時
高校野球で「目的」と「手段」を履き違えてみましょう。
【目的】甲子園に行くために強豪校に負けない練習をする
【手段】他校より長時間の練習を行う
「目的」は同じようですが、目標が「強豪校に負けない練習」に入れ替わっています。
すると手段が「長時間の練習」となるので、目的と手段を履き違えた結果、強豪校よりもハードな練習をすることだけに集中してしまいます。
「他校に負けない練習」手段は、何も「長時間の練習」だけではありません。
科学的なトレーニングを導入したり、練習試合を増やして実戦を積むなどの方法もあります。
「長時間の練習」というのは正に精神論であり、教育者側の自己満足に過ぎません。
仕事における手段と目的
次に仕事上の手段と目的で考えてみましょう。
【目的】事業を継続させるために営業予算を達成する。
【手段】予算達成のリスク軽減に向けた新規販路を開拓する。
目的は「事業の継続」であり、具体的な「営業予算」の数値目標が設定されます。
予算をクリアするためには、様々なリスクが存在するので、見込みが外れた場合のカバーをするために「新規販路を開拓」することで補うように努めます。
ここで「目的」と「手段」を履き違えると、
【目的】営業予算を達成するために新規販路を開拓する。
【手段】1日10件の飛び込み営業を行う。
目的が「事業の継続」→「予算の達成」に入れ替わりました。
もし、目的を上司が設定しているのであれば、「事業の継続」という経営的な視点ではなく、「予算の達成」をすることで社内での評価が高まるという目的の本質が異なってきます。
つまり、「目的」と「手段」が履き違う時の本質は、人の打算や目論みが多分に含まれる時に発生するのです。
実際にあった目的と手段の履き違え
それでは会社員時代に嫌気が差した目的と手段の履き違えを紹介します。
各エピソードから、「目的」と「手段」を履き違える本質を考察して行きましょう。

エピソードその1 マニュアルの整備
中堅社員になった際、多くのベテラン社員の定年が近づいており、新人や若手社員を多く抱えることになった時です。
経営幹部からの指示で業務マニュアルを統一化し、トラブルシューティングを分かりやすく解説した資料を上司とともに整備することになりました。
目的
新人や若手社員向けのトラブルシューティングが充実したマニュアルを整備して統一化を図る。
手段
発生しやすいトラブルと対策、解決方法を分かりやすく解決したマニュアルを作成する。
履き違えの発生
本来は「新人や若手社員」向けの資料作成だったにも関わらず、上司が発案者である「経営幹部」を意識するあまり、事象の要因や詳細内容をメインにした解説が中心となったため、初心者向けの内容とは程遠いものでした。
また、「経営幹部」へ成果を早く見せるために、書式やフォーマットが統一されただけで、マニュアル自体は古いもののコピペするだけの代物になりました。
この事案の本質
「新人や若手社員」→「経営幹部」へと目的の対象がシフトしたのが原因です。
上司にしてみれば、「若手社員」よりも「経営幹部」を意識した方が利益やメリットがあると判断したのでしょう。
結果として、経営幹部は『マニュアルで勉強しろ』と若手社員にハッパをかけるものの、若手社員が読んでも分かりにくい資料であったため、誰も得をしないマニュアルだけが残りました。
エピソード2 深夜の安全設備訓練
警備員時代に働いている施設に新しい安全設備が導入された時です。
いざという時に確実に稼働できるように説明会を兼ねた訓練を実施することになりました。
目的
勤務する警備員が新しい安全設備を確実に操作できるようになる。
手段
警備員の全員が安全設備の説明会に出席し、操作方法の訓練を受ける。
履き違えの発生
全警備員が新しい安全設備を「訓練を受ける」ことで操作が出来るようになれば良いのですが、『全員同時に』が話が進む中で追加されました。
『全員同時』に訓練をを実施するためには、施設の営業が全て終了してからでないと実施できません。
最終的には、翌朝の出勤者を除いた全員が施設が終了した深夜に集合して説明会が開催されることになりました。
この事案の本質
全員が参加出来るように複数の日程を設定して、営業に影響の出ない箇所を日中に行えば良いのですが、何故にわざわざ深夜に殆どの人員を集める必要があったのでしょうか。
説明会を発案したのは現場の管理者で、手間をなるべく少なくしたかったのでしょう。
そこに説明会を容認した幹部が、会社への忠誠心を測るために深夜に実施することになったのです。
社員教育の本来の目的は、社員がスキルアップすることで会社に貢献することであり、管理者・経営者はそれ以上の思惑を付加する必要はないと考えます。
まとめ

目的と手段が履き違えるのは、目的を設定した人間の打算や思惑が大きく影響します。
では、何故に打算や思惑が大きく影響するのでしょうか?
それは、目的を設定のは一定以上の権限を有している人間だからです。
一般社員や部下ならば、自己目標や達成する手段を考えることはできますが、目的は「経営方針」や「事業方針」に影響されるので、仕事上の目的を設定することは出来ません。
但し、働くこと自体の目的を求めることは可能です。
「お金をもっと稼ぎたい」
「夢や希望の自己実現のため」
「社会の役に立ちたい」
「働く」≠「仕事」ですから似て非なるモノにも関わらず、同じモノと捉えている人間が履き違えているのだと実体験で見抜きました。
よく「手段と目的を履き違えるな!」と指導する会社の上司や職場の先輩などは、会社に依存している人なんだと、フリーランスになってみると改めて気付かされます。
そして、「頑張りが足りない」など抽象的なアドバイスや精神論に終始していたことを理解できました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。